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塾の合格実績、その数字は何を数えている? 保護者のための「見方」ガイド
塾や予備校のパンフレット、あるいはWebサイトのトップに大きく並ぶ「合格者数」。中学受験を考えはじめた保護者にとって、この数字は塾選びの大きな判断材料になります。ですが、実はこの数字、塾によって「何を、どう数えているか」がかなり違います。同じ「合格100名」でも、その中身はまったく別物ということが珍しくありません。
この記事では、合格実績の数字がどのように作られているのか、その仕組みと、保護者が数字に振り回されないための読み方を整理します。特定の塾を名指しで非難する記事ではありません。あくまで「数字のからくり」を理解して、冷静に塾を比較できるようになることが目的です。
そもそも合格実績は「統一ルール」がない
まず大前提として、塾の合格実績には、業界共通の集計ルールがありません。各塾が独自の基準で数え、独自の基準で発表しています。第三者が監査しているわけでもありません。
これは決して「どの塾もウソをついている」という意味ではありません。ただ、数え方の自由度が高いぶん、同じ土俵で単純に比較することが難しい、ということです。数字の大小だけで「A塾のほうがB塾より優れている」と結論づけるのは、実は根拠が薄いのです。
では、具体的にどこで差が生まれるのか。代表的な4つのポイントを見ていきましょう。
見方①:「延べ合格」か「実人数」か
一人の受験生が、複数の学校に合格することはよくあります。中学受験では、第一志望の前に「練習」や「安全校」として複数校を受験するのが一般的だからです。
このとき、合格した「学校の数(延べ)」で数えるか、合格した「生徒の数(実人数)」で数えるかで、数字は大きく変わります。たとえば1人の生徒が5校に合格すれば、延べでは「5」、実人数では「1」です。
多くの塾が発表する「◯◯中学 合格△名」は、原則として「その学校に合格した人数」ですが、塾全体の合計値になると延べに近い数え方が混ざることもあります。「合計◯◯名合格!」という大きな数字を見たときは、それが延べなのか実人数なのかを意識するだけで、印象がずいぶん変わります。
見方②:同じ生徒が複数の塾でカウントされる
意外と知られていないのが、一人の生徒が複数の塾の実績に同時に載るケースです。たとえば、大手集団塾に通いながら、弱点補強のために個別指導塾や家庭教師を併用する。あるいは、6年生の後半だけ志望校別の講座を別の塾で受ける。こうした「かけもち」は中学受験ではよくあることです。
この場合、その生徒が難関校に合格すれば、通っていた両方(あるいは複数)の塾が「自塾の合格実績」として数えることができます。どちらもウソではありませんが、業界全体の合格者数を足し上げると、実際の合格者数より多くなる——いわゆるダブルカウントが起きます。
見方③:「講習だけ」の生徒が含まれることがある
塾によっては、通常授業に通っていた生徒だけでなく、夏期講習や志望校別の短期講座、模試だけを受けた生徒を実績に含める場合があります。
短期講座や模試は、他塾に通う生徒が「腕試し」や「弱点補強」で単発利用することが多いものです。それ自体は有益なサービスですが、「その塾で最後まで学んで合格した生徒」と「講習を数回受けた生徒」が同じ1名として数えられていると、実績が指導力を正確に反映しているとは言いにくくなります。
塾の実績を見るときは、「どこからどこまで通った生徒を対象にしているのか(カウント対象の定義)」に注目すると、数字の意味が見えてきます。
見方④:母集団(分母)が見えないと意味が読めない
「難関校に◯名合格」という数字は、それ単体では実は評価しづらいものです。なぜなら、分母——つまり、その塾に何名の生徒が在籍し、そのうち何名がその学校を受験したのか——が分からないと、合格の「率」が読めないからです。
生徒数が非常に多い大手塾なら、合格者の絶対数が多くなるのはある意味当然です。逆に、規模の小さい塾が同じ学校に一定数の合格者を出していれば、合格率という観点では高い可能性もあります。数字の大きさは、必ずしも「一人ひとりへの面倒見の良さ」や「わが子との相性」を意味しません。
「非公表」を選ぶ塾も増えている
近年は、合格者数そのものを公表しない、あるいは公表を取りやめる塾・予備校も出てきています。たとえば大学受験の分野では、合格者数の発表を段階的に縮小・終了する動きがあり、系列校をもつ予備校では本体の自塾人数を公表しない方針をとるところもあります。
「非公表」と聞くと不安に感じるかもしれませんが、これは必ずしもマイナスではありません。数字の水増し競争から距離を置き、実績アピールよりも指導内容で選んでもらおうという方針の表れとも読めます。公表している塾・していない塾を、公表の有無だけで優劣づけるのは適切ではありません。それぞれの発表方針の背景を踏まえて見ることが大切です。
(本記事で塾名を挙げた具体的な合格者数には触れていません。特定の塾・年度の数字を確認したい場合は、必ず各塾の公式発表をご確認ください。塾によって集計方法や公表方針が異なり、同一基準での比較はできない点にご注意ください。)
数字に振り回されないための3つの視点
ここまでを踏まえて、合格実績を見るときの実用的なチェックポイントをまとめます。
- 数え方の定義を探す:「延べ/実人数」「講習生を含むか」など、注記が小さく書かれていることがあります。まずそこを読む
- わが子の志望校に絞って見る:塾全体の合計数より、実際に狙う学校・偏差値帯の実績のほうが参考になります
- 数字以外の情報と合わせる:通塾のしやすさ、面倒見、宿題量、講師との相性など、数字に表れない要素こそ、続けられるかどうかを左右します
合格実績は、塾選びの「入り口」としてはとても役立ちます。ただ、そこに書かれた数字がすべてではありません。仕組みを知ったうえで、体験授業や説明会で自分の目で確かめること。それが、後悔しない塾選びへの近道です。
塾選びと並行して、家庭でできる準備も
塾を比較検討する時期は、そもそも「わが子に中学受験が向いているのか」を家庭で考える時期でもあります。受験の全体像や親の関わり方をつかんでおくと、塾の説明会での質問の質も変わってきます。マンガで受験のリアルを俯瞰できる一冊は、最初の一歩として読みやすくおすすめです。
また、塾での学習が本格化してからつまずきやすいのが算数です。偏差値が伸び悩む前に、基礎を固め直す市販教材を一冊持っておくと、家庭でのフォローがしやすくなります。塾の実績数字を追いかけるよりも、目の前の一問を積み重ねることが、結局は合格への確かな土台になります。
※合格実績は各塾の公式発表等に基づきます。集計方法により重複(延べ・複数校・複数塾での重複計上)を含む場合があり、塾ごとに基準が異なるため単純な比較はできません。具体的な数値は各塾の公式サイトで最新の発表をご確認ください。


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