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単語帳を開いても、昨日覚えたはずの単語をもう忘れている。何度やっても頭に入らず、英語の勉強が嫌になる——。大学受験生の多くが、英単語の暗記でつまずきます。
でも、英単語が覚えられないのは、記憶力が悪いからではありません。多くは、覚え方が非効率なだけです。人の記憶の仕組みに合ったやり方に変えれば、同じ時間でも定着はまるで変わります。
この記事では、まず必要な語彙量の全体像を公式の数字で確認し、次に覚えられない原因を4タイプに切り分けて、タイプ別の手当てと1周の回し方を決められるようにします。
まず「どれだけの語に触れるのか」を数字で押さえる
やみくもに焦る前に、全体像を確認します。文部科学省の学習指導要領では、学校で扱う語数の目安が次のように積み上げられています。
| 段階 | 扱う語数の目安 |
|---|---|
| 小学校 | 600〜700語程度 |
| 中学校 | 小学校で学習した語に1,600〜1,800語程度の新語を加えた語 |
| 英語コミュニケーションI | 小・中学校で学習した語に400〜600語程度の新語を加えた語 |
| 英語コミュニケーションII | Iで示す語に700〜950語程度の新語を加えた語 |
| 英語コミュニケーションIII | IIで示す語に700〜950語程度の新語を加えた語 |
(文部科学省の学習指導要領より。示されているのは指導する語数の目安で、入試に出る語を限定するものではありません)
単純に足すと、高校卒業時点で触れる語は4,000語台から5,000語規模になります。市販の大学受験用単語帳が1,900〜2,000語前後を収録しているのは、このうち受験で問われやすい部分を抜き出しているからです。
この数字を最初に見る意味は、「覚えられない」の正体が量の問題なのか、やり方の問題なのかを分けることにあります。1冊2,000語を1年かけて1周しかしていないなら、それは記憶力ではなく回し方の問題です。
「1日10個ずつ完璧に」は非効率
英単語の暗記でありがちなのが、「1日10個ずつ、完璧に覚えてから次へ」というやり方です。一見まじめですが、これは記憶の仕組みに反しています。
人の記憶は、一度で完璧に覚えるようにはできていません。一度覚えても、時間が経てば忘れます。だから、少数を完璧にするより、大量を何度も高速で回す方が、結果的に多くの単語が定着します。「完璧に覚えてから次」ではなく、「忘れても気にせず何周も回す」のが正解です。
1日10語で2,000語を1周すると200日かかります。1周目が終わるころには、最初の語はとっくに忘れています。これが「やっているのに覚えられない」の正体です。
覚えられない原因を4タイプに切り分ける
同じ「覚えられない」でも、原因が違えば手当ても変わります。次の4つから、自分に近いものを選んでください。
タイプ1:回転が足りない
1周に時間をかけすぎている人。前述のとおり、1周に数か月かかると、1周目の途中で最初のほうを忘れます。
手当て:1日に触れる語数を増やし、1周の日数を短くする。覚える精度は下げてよく、「見た瞬間に意味が浮かぶか」だけを確認して次へ進みます。
タイプ2:眺めているだけで、思い出していない
赤シートを使わず、単語と訳を目で追っているだけの人。これは読書であって暗記の練習ではありません。
手当て:訳を隠し、自分で思い出してから確認する手順に変えます。思い出せなかった語に印をつけ、次の周ではその語だけを重点的に回します。「思い出す」という負荷そのものが記憶を強めます。
タイプ3:語数を絞りすぎている
「まず500語だけ」と範囲を狭めた結果、長文で知らない語ばかりに出会っている人。狭い範囲を完璧にしても、読解では効果を感じにくくなります。
手当て:1冊全体を1周の単位にする。最初の周は精度を求めず、全体を通すことを優先します。精度は周回数で上げていきます。
タイプ4:土台(中学レベル)が抜けている
受験用の単語帳を開いても、そもそも例文の意味が取れない人。この場合、単語帳の回し方をいくら変えても改善しません。
手当て:受験用単語帳を止め、中学レベルの語と文法に戻るのが最短です。遠回りに見えますが、土台が入ると受験用単語帳の進み方が変わります。基礎固めが間に合わないと感じている場合は大学受験の夏休み、基礎固めが間に合わないと感じたときの立て直し方も参考にしてください。
| タイプ | 症状 | 最優先の手当て |
|---|---|---|
| 1 回転不足 | 1周に数か月かかっている | 1周の日数を短くする |
| 2 想起していない | 赤シートを使っていない | 隠して思い出す手順に変える |
| 3 絞りすぎ | 範囲を狭めても長文で効かない | 1冊全体を1周の単位に |
| 4 土台の欠落 | 例文の意味が取れない | 中学レベルの語と文法へ戻る |
1周にかける日数を、残り期間から逆算する
回転数を上げるといっても、闇雲では続きません。残り期間から1周の日数を決めると、1日の量が自動的に出ます。
| 本番までの期間 | 現実的な周回数 | 1周の目安 | 2,000語の場合の1日の語数 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 8周以上 | 6週間 → 4週間 → 2週間と短縮 | 序盤は50語前後、終盤は150語前後 |
| 半年 | 5〜6周 | 4週間 → 2週間 | 序盤は70語前後、終盤は150語前後 |
| 3か月 | 3〜4周 | 3週間 → 2週間 | 100語前後 |
ポイントは、周を重ねるごとに1周の日数を短くすることです。1周目は知らない語が多いので時間がかかりますが、2周目以降は既知の語が増えるぶん速く回せます。同じペースを維持しようとすると、後半に時間が余ってしまいます。
志望校別の目安から語数を決めたい場合は大学受験の夏休み、英単語は何語覚える?志望校別の目安と進め方も参考になります。
英単語の覚え方・5つの技術
タイプ別の手当てを決めたら、次の5つを組み合わせます。
| 技術 | やること | なぜ効くか |
|---|---|---|
| ①大量を高速回転 | 1回を完璧にせず、多くを何周も回す | 忘れる前提で回数を稼ぐ |
| ②想起テスト | 見て思い出す→隠して確認 | 「思い出す」と記憶が強まる |
| ③間隔反復 | 忘れかけた頃に再確認 | 記憶が定着するタイミングで復習 |
| ④文脈で覚える | 例文の中で意味をつかむ | 単語同士がつながり忘れにくい |
| ⑤五感を使う | 声に出す・書く | 複数の感覚で記憶が濃くなる |
最も重要なのが①の高速回転と②の想起テストです。日本語訳を隠して意味を思い出す——この「思い出す」作業こそが記憶を強めます。眺めるだけの暗記は、思い出す練習になっていないので定着しません。
⑤の「書いて覚える」は、合う人と合わない人がはっきり分かれます。書くと時間あたりの語数が大きく落ちるので、回転が足りていない人(タイプ1)が書き取りを増やすと逆効果になりがちです。書くのは、何周回しても覚えられない少数の語に絞るのが現実的です。
文脈で覚える
単語を単体で覚えようとすると、無味乾燥で忘れやすくなります。例文や文章の中で覚える(④)と、「どんな場面で使うか」という手がかりがついて、記憶に残りやすくなります。
長文の中で単語に出会うと、その単語が生きた形で頭に入ります。読解の練習をしながら語彙も増やせるので、一石二鳥です。次の単語帳は、長文の中で単語を覚える構成になっていて、文脈で定着させたい人に向いています。
音声を使って回したい場合は、音声が無料で使える版を選ぶと、通学中の周回にも回せます。
単語帳そのものの比較で迷っている人はターゲット1900とシステム英単語どっち?覚え方タイプ別の選び方、紙か電子かで迷っている人は単語帳は電子版と紙どっちがいい?暗記に向く選び方を比較もどうぞ。
筆者の判断基準
英単語の相談で筆者が最初に確認するのは、「今の単語帳を何周したか」です。
周回数が2周未満なら、覚え方の議論に入る前に回転数の問題だと判断します。単語帳を替えたくなるのはたいていこのタイミングですが、替えると周回数がゼロに戻るので、いちばん損な選択になりがちです。
もうひとつの基準は、赤シートを使っているかです。使っていない人は、暗記ではなく読書をしている状態なので、まずここを変えてもらいます。ここだけで手応えが変わる人は少なくありません。
単語帳を替えてよいと考えるのは、例文の意味がまったく取れない場合(タイプ4)だけです。このときはレベルを下げるのが正解で、同レベルの別の単語帳に横移動しても状況は変わりません。
よくある質問
1日に何個覚えればいいですか?
「完璧に覚える個数」を決めるより、「1日に触れる個数」を多めにするのがコツです。前述の逆算表のとおり、本番までの期間から1周の日数を決めれば、1日の語数は自動的に決まります。100語を1周ずつ何日も回すほうが、10語を完璧にするより多く定着します。
覚えてもすぐ忘れます。
それが普通です。忘れることを前提に、忘れかけた頃に何度も回しましょう。回数を重ねるうちに、忘れにくい記憶に変わっていきます。目安として、2周目までは「ほとんど忘れている」状態が当たり前だと考えてください。
発音やアクセントも覚えるべきですか?
声に出して覚える(⑤)と、リスニングや長文読解にも効きます。音声つきの単語帳を使い、発音しながら覚えると効率的です。特に共通テストはリスニングの配点が大きいため、文字だけで覚えた語が音で分からない状態は避けたいところです。
まとめ:完璧より「高速回転と想起」
大学受験で英単語が覚えられないのは、記憶力ではなく覚え方の問題です。高校卒業までに触れる語は4,000語台から5,000語規模——この全体像を踏まえれば、少数を完璧にする方法では時間が足りないことが分かります。
まず原因を4タイプ(回転不足/想起していない/絞りすぎ/土台の欠落)に切り分け、残り期間から1周の日数を逆算する。そのうえで大量を高速で回し、想起テストで思い出す練習をする。間隔をあけて反復し、文脈の中で覚える。忘れることを恐れず、何周も回していきましょう。
参照した公式情報(取得日 2026-08-30)
- 文部科学省 現行の学習指導要領(外国語・抜粋)=小学校・中学校・高等学校の各段階で扱う語数の目安: https://www.mext.go.jp/content/20251216-mxt_kyoiku01-000046366_9.pdf
- 文部科学省 中学校学習指導要領 第2章 各教科 第9節 外国語: https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/gai.htm


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