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模試の判定が思うように上がらない。このまま第一志望を目指していいのか、それとも下げるべきか——受験生も保護者も、一度は悩む問題です。安全策を取るべきか、挑戦を続けるべきか、正解が見えずに苦しいですよね。
先にお伝えすると、この記事は下げるべきとも下げるなとも言いません。志望校をどうするかは、その人の状況や価値観によって答えが変わる、とても個人的な決断だからです。大切なのは、感情や不安だけで決めるのではなく、いくつかの軸で冷静に判断材料をそろえること。
この記事では、下げる対象の切り分け方、時期ごとにできること、共通テスト後の出願で見る材料、そして決めた後の動き方までを順に整理します。日程は令和9年度(2027年度)入試を例に、公式の資料から確認できた値だけを載せました。
下げる前に、何を下げるのかを3つに切り分ける
「志望校を下げる」という言葉は、実はいくつもの違う行動をひとまとめにしています。切り分けないまま悩むと、本当は変えなくていいものまで手放してしまいがちです。まず、変えられるものを3つに分けてみてください。
切り分け1|第一志望そのものを変える
いちばん重い変更です。学びたい内容や卒業後の進路に直結するので、後述する条件(学びたい内容・通学と生活・奨学金の扱い)を確認してから決めます。多くの人が「下げる」と言うときにイメージしているのはこれですが、実際には次の2つで解決することも少なくありません。
切り分け2|併願の組み方を変える
第一志望はそのままに、確実に合格を確保できる併願校を増やす・レベルを散らす、という変更です。第一志望を守りながら、不合格が一つも無い状態を作れなくても、進学先が確保できている状態は作れます。挑戦を続ける気力は、実は「落ちても進学先はある」という安心から生まれることが多いものです。
切り分け3|受験方式(選抜区分)を変える
同じ大学でも、入試の入口は一つではありません。文部科学省の令和9年度大学入学者選抜実施要項では、一般選抜のほかに総合型選抜と学校推薦型選抜が区分として示されており、学校推薦型選抜の入学願書受付は令和8年11月1日以降、その判定結果の発表は令和8年12月1日以降とされています。科目数の少ない方式に変える、共通テストを使う方式に変える、といった組み替えで、第一志望を変えずに勝ち筋が増えることがあります。
この3つのうち、2と3は第一志望を手放さずにできる変更です。迷っているときは、2と3を先に検討してから1を考えると、後悔が残りにくくなります。
判断材料をそろえる4つの軸
切り分けができたら、次は材料集めです。志望校を考えるときは、次の4つの軸で状況を整理します。
| 軸 | 見るポイント |
|---|---|
| ①模試の推移 | 判定だけでなく、点数が上向きの傾向かを見る |
| ②過去問の相性 | 志望校の出題形式が自分に合っているか |
| ③残り時間で埋まる差か | 今の差が、残りの期間で現実的に埋まるか |
| ④本当に行きたいか | 妥協して後悔しないか、譲れない理由があるか |
この4軸の狙いは、判定という一つの数字だけで決めないことです。特に①は、今の判定が振るわなくても点数が上向きなら、まだ動いている途中だというサイン。逆に、④のようにどうしても行きたい理由があるなら、多少厳しくても挑戦する意味があります。数字と気持ちの両面から見てください。
②の過去問の相性は見落とされがちですが、記述が多いか選択が多いか、時間配分が厳しいか、といった相性は判定に表れません。同じ偏差値帯でも、相性の良い大学と悪い大学があります。
模試の判定は実施会社ごとに定義が違う
判定を材料にするときに知っておきたいのが、A〜Eという記号の意味が模試の実施会社ごとに決められているという点です。他社の模試の判定と、そのまま同じ重みで比べることはできません。
たとえばベネッセは、進研模試/ベネッセ総合学力テストの各判定に対応する合格可能性を次のように公表しています。
| 判定 | 合格可能性(パーセント) |
|---|---|
| A | 80以上 |
| B | 60以上80未満 |
| C | 40以上60未満 |
| D | 20以上40未満 |
| E | 20未満 |
この区切りはあくまでベネッセが公表しているもので、他社の模試が同じ区切りを使っているとは限りません。自分が受けた模試については、その実施会社が公表している判定基準の説明を必ず確認してください。判定は受験時点での位置を示す推計であって、合否を決めるものではありません。
判断のタイミング別にできること
同じ「下げるかどうか」でも、時期によって選べる手は変わります。令和9年度入試では、大学入試センターが共通テスト本試験の実施期日を令和9年1月16日(土)、17日(日)と公表しています。この日を軸に、3つの場面を見ておきましょう。
夏の終わり|変える余地がいちばん大きい時期
夏明けの時点なら、3つの切り分けすべてが選べます。科目を絞る、受験方式を変える、併願を組み直す——どれを選んでも、対策に充てる時間が残っています。逆に言えば、この時期に決めなかったことは、後になるほど選択肢が減っていくということです。
ただし、夏の模試は現役生にとって伸びが表に出る前のタイミングになりやすい点は差し引いて見てください。一度の判定で第一志望をたたむ判断は急ぎすぎです。
秋の模試後|併願と受験方式を組み直す時期
秋になると、過去問との相性や得点の伸び方がはっきりしてきます。ここでの主役は、切り分け2と3です。第一志望はそのままに、併願の段を厚くする、共通テスト利用の出願先を足す、といった組み替えが現実的な打ち手になります。
各大学の募集要項は、文部科学省の実施要項で令和8年12月15日までに発表するとされています。秋のうちに志望校と併願校の候補を絞っておけば、発表された募集要項をすぐ読み込めます。
共通テスト後の出願直前|出願先を決める最後の場面
自己採点の結果を持って出願先を決める、最後の場面です。国立大学協会の実施要領では、2027年度入試の一般選抜の出願期間は1月25日から2月3日までとされています。共通テストの直後から、ごく短い期間で決めることになります。
私立大学を含む各大学の個別試験については、文部科学省の実施要項で試験期日を令和9年2月1日から3月25日までの間と定めており、合格者の決定発表は令和9年3月31日までとされています。つまり、1月の出願で決めた先が、そのまま最後まで走る相手になります。
共通テスト後の国公立出願で見る3つの材料
出願直前は時間がありません。見る材料をあらかじめ決めておくと、限られた日数で迷わずに済みます。
材料1|自己採点をどう扱うか
自己採点は、出願先を決めるための自分の手元の数字です。まずは科目ごとに、想定していた得点とのずれを書き出してください。全体で沈んだのか、特定の科目だけ落ちたのかで、打つ手が変わります。特定科目だけの不調なら、その科目の配点が軽い大学を探すという動き方ができます。
材料2|共通テストと個別試験の配点比率
同じ得点でも、共通テストの比重が重い大学と、個別試験の比重が重い大学では立ち位置が変わります。共通テストで伸び悩んだなら個別試験の比重が重い大学を、逆に共通テストで稼げたなら共通テストの比重が重い大学を見る、という探し方ができます。配点比率は各大学の募集要項に書かれています。
材料3|分離分割方式の枠と二次の得意科目
国立大学の一般選抜は、国立大学協会の実施要領により分離分割方式で行われます。前期日程の試験を実施して合格者を発表し、入学手続を行わせたうえで、後期日程の試験と合格者発表を行う方式です。前期日程に合格して入学手続前期締切期日までに手続を完了した人は、後期日程に出願・受験しても後期日程の合格者とはなりません。
そして出願できるのは、前期日程を実施する大学・学部から一つ、後期日程を実施する大学・学部から一つの、合計二つまでとされています。この枠の中で、個別試験の得意科目が使える組み合わせを探すのが出願設計です。
2027年度入試の日程は次のとおり公表されています。
| 項目 | 期日 |
|---|---|
| 一般選抜の出願期間 | 1月25日から2月3日まで |
| 前期日程の試験第1日 | 2月25日 |
| 前期日程の合格発表 | 3月6日から3月10日まで |
| 入学手続前期締切期日 | 3月15日 |
| 後期日程の試験開始 | 3月12日以降 |
| 後期日程の合格発表 | 3月20日から3月24日まで |
後期日程の試験開始が前期日程の合格発表と重なる時期にあることが分かります。前期の結果を見てから後期の対策を始めるのでは間に合わないので、出願の段階で後期の準備も見込んでおく必要があります。
下げると決めるときに確認する3つの条件
切り分け1、つまり第一志望そのものを変えると決めるなら、その前に次の3つを確認してください。
条件1|学びたい内容がその大学で学べるか
偏差値の並びだけで下げ先を選ぶと、学部名が同じでも学べる内容が違った、ということが起こります。カリキュラムやゼミ・研究室の一覧、卒業後の進路を、大学の公式サイトで確認してください。実際に足を運んで確かめられるなら、そのほうが確実です。何を見てくるかはオープンキャンパスで確認することリストにまとめています。
条件2|通学と生活の条件
自宅から通えるのか、自宅外になるのかで、生活の形が変わります。通学時間、キャンパスの所在地(学年によって移る大学もあります)、住まいの確保が必要かどうかを、家族と一緒に確認しておきましょう。
条件3|奨学金の予約採用と授業料等減免の扱い
高校を通じて日本学生支援機構の予約採用に申し込み、採用候補者に決定している場合、進学先が変わっても手続きは進学先で行います。機構の案内によると、進学後に採用候補者決定通知を進学先の学校に提出し、進学届入力下書き用紙と識別番号を学校から受け取って、学校が指定する期間までにインターネットで進学届を提出する流れです。
一方で、授業料・入学金の免除や減額は確認大学等が行い、機構が行うのは給付奨学金の支給だと案内されています。つまり、減免の取扱いは進学先の大学に確認する必要があります。下げ先を検討する段階で、その大学が修学支援新制度の対象かどうか、手続きの時期はいつかを調べておくと安心です。
下げない判断をするときの条件
挑戦を続けると決めるときにも、確認しておきたい条件があります。それは、併願で進学先を確保できているかです。
第一志望を維持すること自体にリスクはありません。リスクがあるのは、どこにも受からない可能性を残したまま突き進むことです。合格の可能性が高い併願校を確保できていれば、第一志望への挑戦は続けられます。逆に、併願がすべて同じくらい厳しいなら、それは第一志望を下げる話ではなく、併願を組み直す話です。
もう一つ注意したいのは、下げた先に向けて勉強の中身を組み直さないと、目標が下がった分だけ取り組む密度も落ちやすいことです。下げるなら、下げた先に合わせて過去問と時間配分を組み直すところまでをセットにしてください。
保護者・先生と話すときに持っていく材料
一人で抱え込まず相談するのは大事ですが、手ぶらで相談すると「頑張れ」か「やめておけ」の二択に流れがちです。次の材料を持っていくと、話が具体的になります。
| 持っていくもの | 何が決まりやすくなるか |
|---|---|
| 直近3回分の模試の成績表 | 判定ではなく点数の推移で話せる |
| 志望校と併願候補の一覧 | 切り分け2(併願の組み方)の議論ができる |
| 志望校の募集要項の選抜区分と科目 | 切り分け3(受験方式)の議論ができる |
| 過去問を解いたときの得点と所要時間 | 相性と時間配分の課題が見える |
| 通学・住まい・費用の前提メモ | 家族の側で決める条件が整理できる |
保護者の方は、結論を出す役ではなく、この表を一緒に埋める役に回るのがおすすめです。本人が納得していない変更は、あとで気持ちが戻ってこなくなります。
下げる前にできること
下げようかと思ったとき、その前にやり残したことがないかを確認してみてください。判定が振るわない原因が勉強法にあるなら、やり方を変えることで動く余地があります。
原因の切り分けには大学受験の独学で成績が伸びない、科目ごとの立て直しには大学受験の苦手科目の克服方法が参考になります。
次の本は、判定が厳しい状況からの勉強法の立て直しを扱っていて、下げる判断の前にもう一度やってみるためのヒントになります(結果を保証するものではありませんが、考え方の参考になります)。
決めた後の切り替え方
どちらに決めたとしても、決めた直後の動き方で結果は変わります。
過去問の入れ替え
志望校や受験方式を変えたなら、解く過去問も入れ替えます。出題形式・試験時間・記述量が変わるので、以前の志望校向けに作った時間配分はそのまま使えません。新しい志望校の過去問を1年分通しで解き、時間配分を作り直すところから始めてください。
募集要項と出願書類の確認
変更先の募集要項をあらためて読み、出願要件・出願手続・試験期日・入学検定料の納入手続と期限を確認します。文部科学省の実施要項では、これらの入学志願者が出願に必要な事項を記述した募集要項を、各大学が令和8年12月15日までに発表するとされています。調査書など学校に用意してもらう書類は、依頼から受け取りまで日数がかかるので、出願期間の直前に慌てないよう早めに動きましょう。
筆者の判断基準
編集部として、この判断を扱うときに置いている基準は次の3つです。
- 第一志望を変える前に、併願と受験方式を先に触る。この2つで解決するなら、第一志望を手放す必要はありません。本人の気持ちが折れるコストのほうが大きいと考えています。
- 公式で確認できる日程を先に紙に書き出してから考える。共通テストの期日、出願期間、試験日、合格発表、入学手続の締切。ここが埋まると、「いつまでに何を決めればよいか」が自動的に決まります。相対的な時期の話だけで悩むより、期日を置いたほうが早く楽になります。
- 判定の記号ではなく点数の推移で話す。判定の定義は実施会社ごとに違い、記号は会話の解像度を下げます。直近3回の点数と、科目ごとの内訳で話すほうが、次にやることが決まります。
この基準は合否を保証するものではありません。判断の材料をそろえるための、編集上の優先順位です。
よくある質問
Q. E判定でも第一志望を目指していいですか?
判定は受験時点の位置を示す推計であって、合否の予言ではありません。点数が上向きで、残り時間で差が埋まる見込みがあり、強い意志があるなら、挑戦を続ける意味はあります。ただし、どの判定であっても逆転を保証するものではないので、併願で進学先を確保したうえで挑むのが現実的です。なお判定の区切りは実施会社ごとに異なるため、自分が受けた模試の基準で読んでください。
Q. 親としてどう関わればいいですか?
本人の意思を尊重しつつ、4つの軸と相談用の材料を一緒に整理する役に回るのがおすすめです。親が一方的に決めると、うまくいかなかったときに本人の中に納得が残りません。通学・住まい・費用といった家庭側で決める前提だけは、早めに言葉にして共有しておくと、本人が選べる範囲がはっきりします。
Q. いつまでに決めればいいですか?
最後の場面は、共通テスト後の出願です。国立大学協会の実施要領によると、2027年度入試の国立大学の一般選抜の出願期間は1月25日から2月3日まで。共通テストは令和9年1月16日、17日に実施されるので、自己採点から出願までは日数が限られます。私立大学や公立大学は大学ごとに期日が異なるので、志望校の募集要項で必ず確認してください。決められる最後の日から逆算して、それより前の模試を判断材料にしていくのが現実的です。
参照した公式情報(取得日)
いずれも2026年9月19日に取得し、令和9年度(2027年度)入試の情報を確認しました。日程は変更されることがあるため、出願の際は必ず最新の公式発表と志望校の募集要項をご確認ください。
- 大学入試センター 令和9年度試験(共通テスト本試験の実施期日)
- 文部科学省 令和9年度大学入学者選抜実施要項(選抜区分、個別テストの試験期日、合格者の決定発表、募集要項の発表期限)
- 国立大学協会 国立大学の2027年度入学者選抜についての実施要領(分離分割方式、出願期間、前期・後期の日程、入学手続締切)
- 日本学生支援機構 大学等奨学生採用候補者(予約採用)に決定された方へ(進学届の提出手続き)
- 日本学生支援機構 給付奨学金(返済不要)制度の概要(授業料等の免除・減額の実施主体)
- ベネッセ 各判定の合格可能性について教えてください(進研模試/ベネッセ総合学力テストの判定と合格可能性)
まとめ:切り分けて、期日を置いて、材料で決める
大学受験で志望校を下げるべきかは、下げる・下げないの二択ではありません。まず第一志望・併願の組み方・受験方式の3つに切り分け、第一志望を手放さずにできる変更から検討します。
そのうえで、模試の推移・過去問の相性・残り時間・本当に行きたいかの4軸で材料をそろえ、共通テストの期日や出願期間といった公式の日程を紙に置いて、いつまでに何を決めるかを固定します。下げると決めるなら学びたい内容・通学と生活・奨学金の扱いを、下げないと決めるなら併願で進学先を確保できているかを確認してください。
焦って決めず、材料をそろえたうえでの判断であれば、どの道を選んでもそれは納得できる選択になります。


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