本ページはプロモーションが含まれています
小論文の書き方|高校生が設問タイプ別に60分・90分で書き切る手順
小論文の書き方を調べると、序論・本論・結論の三部構成、だ・である調、原稿用紙の使い方——といった説明はすぐに見つかります。ところが実際に過去問を開いて時計をスタートさせると、まったく別のことでつまずきます。課題文が思ったより長い。グラフのどこを読めばいいのか決まらない。書き出しを三回書き直したところで半分の時間が消え、結論が一行で終わる。
書き方の型を覚えたのに答案が仕上がらないとき、足りていないのは文章力ではありません。設問のタイプごとに「最初に何をするか」が決まっていないことと、試験時間を分単位で割り振っていないことの二つです。小論文は、白紙から完成品までを制限時間内に一人で進める作業なので、手順が決まっていないと構想の段階で時間を使い切ってしまいます。
この記事では、2027年度入試(2026年度実施)の総合型選抜・学校推薦型選抜を受ける高校生に向けて、次の三つを決められるようにまとめました。
- 志望校の要項から、試験時間・字数・出題形式の三つをどう確定させるか
- 課題文型・資料型・テーマ型で、手を動かす順番をどう変えるか
- 60分・90分それぞれで、読解・構想・執筆・見直しに何分ずつ割り当てるか
参考書で型そのものから固めたい場合は、大学受験の小論文対策もあわせてご覧ください。この記事は「決まった時間内に一本書き上げる手順」に絞って解説します。
小論文は何を測る試験か——要項が定める位置づけ
手順の話に入る前に、小論文がどういう位置づけの試験なのかを確認しておきます。ここを取り違えると、練習の方向がまるごとずれるためです。
要項では「教科の知識を問う試験」とは別ものとされている
文部科学省が通知した令和9年度大学入学者選抜実施要項(令和8年5月27日付け、文部科学省高等教育局長通知)は、入学者の選抜を、調査書の内容、学力検査、小論文・面接・実技検査等、資格・検定試験等、志願者本人の記載する資料等をアドミッション・ポリシーに応じて組み合わせて行うものとしています。小論文は、学力検査とは別の評価方法として並んでいます。
その上で、評価方法を定めた第6の3では、小論文・面接・実技検査等について、入学志願者の「自らの考えを論理的・創造的に形成する思考・判断の能力」や「思考・判断した過程や結果を的確に、更には効果的に表現する能力」を含む能力・適性等を多角的に評価・判定するために活用することが望ましい、とされています。さらに同じ項では、小論文・面接・実技検査等について、専ら教科・科目に係る知識を問うこと、たとえば教科・科目に係る知識を問う問題を小論文等の形式で行うことにならないように留意しなければならない、と明記されています。
つまり小論文は、知識の量を確かめるための試験としては想定されていません。評価されるのは、与えられた材料から考えを形づくる過程と、それを読み手に伝わる形で出す力です。ここが分かると、練習で優先すべきことが変わります。難しいテーマの知識を詰め込むより、手元の材料から結論までを時間内に運ぶ動作を固めるほうが、点につながりやすくなります。
ただし例外もあります。大学によっては、小論文という名前の試験で教科の基礎学力を問う形式を採っている場合があります。後述する大阪公立大学の理学部物理学科のように、要項側に出題の中身が明記されていることがあるため、名称だけで内容を推測しないことが大切です。
総合型選抜・学校推薦型選抜で小論文が課される仕組み
同じ実施要項は、総合型選抜について、大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力等も適切に評価するため、調査書等の出願書類だけではなく、第6の1から4に掲げる評価方法のうち少なくともいずれか一つを必ず活用し、その旨を募集要項に記述する、と定めています。学校推薦型選抜についても同じ趣旨の規定が置かれています。
第6の1から4は、順に、教科・科目に係る個別テスト、大学入学共通テストの利用、小論文・面接・実技検査等、資格・検定試験等の成績の活用です。書類と面接だけで完結させることはできず、このいずれかを必ず入れる必要があるため、共通テストを課さない選抜区分では小論文が選ばれやすい構造になっています。推薦や総合型で小論文を課す大学が多いのは、この仕組みによるものです。
11月以降に小論文の試験が集中する理由
同じ要項の第4では、選抜区分ごとに願書受付と結果発表の時期が定められています。
| 選抜区分 | 入学願書の受付 | 判定結果の発表 |
|---|---|---|
| 総合型選抜 | 令和8年9月1日以降 | 令和8年11月1日以降 |
| 学校推薦型選抜 | 令和8年11月1日以降 | 令和8年12月1日以降で、一般選抜の試験期日の10日前まで(共通テストを活用する場合は前日までのなるべく早い期日) |
| 一般選抜(教科・科目に係る個別テスト) | 試験期日に応じて定める | 令和9年3月31日まで |
一般選抜の個別テストの試験期日は令和9年2月1日から3月25日までの間と定められていますが、第6の3から5に掲げる評価方法、つまり小論文や面接は、令和9年2月1日よりも前から実施できるとされています。総合型選抜は11月1日以降に結果を出す必要があるため選考は10月までに、学校推薦型選抜は出願が11月1日以降なので試験は11月から12月に集中します。10月上旬の時点で小論文対策を進めている高校生の多くにとって、本番は数週間から二か月ほど先ということになります。
各選抜区分の日程の全体像は総合型選抜の日程と学校推薦型選抜の日程にまとめてあります。自分の受ける区分がどの時期に動くかを先に押さえておくと、この後の演習計画が立てやすくなります。
なお、募集要項そのものは令和8年12月15日までに発表するものとされており、入試方法や評価方法などの基本的な事項は令和8年5月27日から7月31日までに発表するものとされています。11月・12月に試験を受ける区分であれば、要項はすでに公開されているはずの時期です。
作文・感想文との違いは、ここだけ押さえれば十分
小論文の解説記事の多くが作文との違いから始まりますが、実務上押さえるべき差は多くありません。次の表の三行だけ意識しておけば、書き分けは成立します。
| 観点 | 作文・感想文 | 小論文 |
|---|---|---|
| 求められる中身 | 出来事とそれに対する気持ち | 問いに対する答えと、その答えを支える理由 |
| 読み手が確かめること | 体験がいきいきと伝わるか | 主張と理由がつながっているか |
| 文末・文体 | です・ます調でも書ける。比喩や倒置も使える | だ・である調で統一し、比喩・倒置・話し言葉は避ける |
この違いを長く説明しても答案は良くなりません。大事なのは、答案の一文目から最後まで「問いへの答え」を軸に置き続けることです。気持ちを書いた瞬間に感想文へ寄る、と覚えておけば足ります。
志望校の要項で先に確定させる3つ(試験時間・字数・出題形式)
小論文の練習は、志望校の条件を確定させてから始めます。条件が分からないまま一般的な練習を積むと、本番で時間や字数が合わずに組み立て直すことになります。確定させるのは、試験時間・字数・出題形式の三つです。
同じ年度でも、ここまで違う(2027年度入試の実例)
どれくらい違うのかを、2027年度入試(2026年度実施)の要項から実際に拾ってみます。いずれも各大学が公表している募集要項の記載です。
| 大学 | 選抜区分・学部等 | 小論文の試験時間 | 字数の指定 | 出題形式として書かれている内容 |
|---|---|---|---|---|
| 大阪公立大学 | 学校推薦型選抜 現代システム科学域 環境社会システム学類 | 9:30〜11:30(120分) | 要項に記載なし | 日本語及び英語の文章や資料による出題に基づき、理解力、思考力、表現力等を問う |
| 大阪公立大学 | 学校推薦型選抜 現代システム科学域 教育福祉学類 | 9:30〜11:00(90分) | 要項に記載なし | 日本語及び英語の文章や資料による出題に基づき、理解力、思考力、表現力等を問う |
| 大阪公立大学 | 学校推薦型選抜 農学部 緑地環境科学科/獣医学部 獣医学科 | 11:00〜12:00(60分) | 要項に記載なし | 学科ごとに要項本文で規定 |
| 大阪公立大学 | 学校推薦型選抜 理学部 物理学科(第2次選考) | 9:30〜12:00(150分) | 要項に記載なし | 数学、物理、英語の基礎学力を問う |
| 琉球大学 | 総合型選抜Ⅰ 教育学部 学校教育教員養成課程 小学校教育コース 教科教育専攻(地域教員希望枠) | 9:30〜11:00(90分) | 要項に記載なし | 沖縄県の学校教育における課題等に関する小論文。提示される課題には動画の視聴、あるいは簡単な資料を用いることもある |
| 高千穂大学 | 総合型選抜(基礎学力型)で「小論文」を選択した場合 | 60分 | 要項に記載なし | 特定の教科・科目に限定されず思考力・判断力・表現力等を評価する総合的な記述式問題(資料を読み、小論文を書く形式) |
| 高千穂大学 | 総合型選抜(小論文提出型) | 試験時間なし(事前に作成して提出) | 400字 | 各回に応じたテーマに対し、事前に小論文を作成して出願書類と一緒に提出 |
出典はいずれも各大学の公式ページです(末尾の参照節に URL を載せています)。この表から読み取れることは三つあります。
第一に、試験時間は60分から150分まで開きがあります。同じ大学の中でも学部・学科によって倍以上違います。60分の答案と150分の答案では、材料の集め方も見直しの深さも別ものになります。
第二に、出題形式は「小論文」という名前からは分かりません。琉球大学の例では課題として動画が使われることがあると書かれており、大阪公立大学では日本語だけでなく英語の文章や資料が出ると書かれています。理学部物理学科のように、教科の基礎学力を問うと明記されている区分もあります。想定していた形式と違えば、用意した手順はそのまま使えません。
第三に、字数は募集要項に書かれていないことが多いという点です。上の表でも、字数の指定を要項本文に書いているのは事前提出型の一件だけでした。字数は試験当日に問題用紙で指定される形が一般的なため、過去問から推定することになります。
そして高千穂大学の小論文提出型のように、試験時間という概念がない区分もあります。事前に書いて出す形式なら、練習で鍛えるべきは速さではなく推敲の精度です。ここを取り違えると、練習の方向が根本から変わってしまいます。
字数が要項に書かれていないときの考え方
要項に字数が無い場合、次の順番で確認します。
- 大学が公表している過去の小論文問題(試験問題やテーマを公開している大学があります)
- 大学が公表している出題意図・採点の観点
- 高校に届いている大学資料や、進路指導室にある過去問ファイル
実施要項の第11では、教科・科目に係る個別テストの試験問題については原則として公表するとされ、解答又は解答例等及び出題の意図についても原則として公表するとされています。そのうえで、小論文のテーマや口頭試問の内容等についても、積極的に公表することが望ましいと書かれています。望ましい、という書き方なので全大学が出しているわけではありませんが、大学の入試情報ページに過去のテーマが掲載されているケースは少なくありません。
それでも見つからないときは、試験時間から逆算した幅で練習します。考えながら手書きする速度は、慣れていない段階では毎分20字前後、書き慣れてくると毎分30字前後まで上がります。60分の試験なら執筆に使えるのは30分前後なので、600字から800字あたりが現実的な幅になります。90分なら執筆に45分前後を取れるので、1,000字から1,200字あたりです。この幅で練習しておけば、本番の指定が多少ずれても対応しやすくなります。
3つが決まると、演習1回の設計が決まる
試験時間・字数・出題形式の三つが決まると、一回の演習で何をするかが自動的に決まります。
| 確定した条件 | 演習で固定すること |
|---|---|
| 試験時間 | タイマーの設定時間と、後述する配分表のどれを使うか |
| 字数 | 使う原稿用紙の枚数と、序論・本論・結論の行数の目安 |
| 出題形式 | 過去問の代わりに使う素材(課題文か、統計資料か、一行テーマか) |
逆に言えば、この三つが未確定のまま問題集を解き始めると、毎回条件が変わることになり、時間感覚が身につきません。志望校が複数ある場合は、最も試験時間が短い条件を基準に練習します。短い時間で書ける手順は長い時間にも流用できますが、逆は成立しにくいためです。
設問タイプの見分け方と、タイプ別の解き分け手順
ここからがこの記事の本題です。小論文は設問タイプによって、最初にする作業と手順の順番が変わります。同じ「構想して書く」でも、課題文型と資料型では手の動かし方がまったく違います。
問題用紙を開いて10秒でタイプを判定する
まず、問題用紙を開いたらタイプを判定します。判定は、与えられているものを見れば10秒で終わります。
| 与えられているもの | タイプ | 最初にする作業 | やりがちな失敗 |
|---|---|---|---|
| まとまった長さの文章 | 課題文型 | 筆者の主張を一文にする | 課題文の内容をなぞって終わる |
| グラフ・表・統計数値 | 資料・グラフ型 | 数値から読み取れる事実を書き出す | 数値を紹介するだけで論に使わない |
| 一行から数行の問いだけ | テーマ型 | 問いを自分で狭める | 話が大きすぎて具体例が入らない |
| 文章とグラフの両方 | ミックス型 | 設問文を読んで、どちらが主かを決める | 両方に同じ分量を割いて時間切れ |
判定を済ませたら、次に設問文の動詞に線を引きます。述べよ、論じよ、要約せよ、あなたの考えを書け、賛否を明らかにせよ——この動詞が、答案に入れるべき要素を決めます。要約が求められているのに自分の意見から書き始めると、それだけで大きく減点されます。逆に、賛否を明らかにせよと書かれているのに両論併記で終わると、答えていないことになります。
設問が複数に分かれている場合は、配点か字数指定の大きいほうが本体です。小問1で要約、小問2で意見、という形なら、時間配分も字数比に合わせます。
課題文型:要約→対立軸→自分の立場の順に固める
課題文型は、筆者の主張を正確に受け取れているかがまず見られます。手順は次の順に固定します。
第1段階:筆者の主張を一文にする。 課題文を読みながら、筆者が一番言いたいことを一文で余白に書きます。長い文章でも、主張は一つか二つです。段落ごとの要点をすべてメモしようとすると時間が足りなくなるので、書き出すのは主張と、その主張を支える理由の二つに絞ります。
第2段階:対立軸を見つける。 筆者の主張の反対側に何があるかを考えます。ほとんどの課題文は、何かを否定するか、何かと比べて主張を立てています。筆者はAを支持しBを退けている、という形に整理できれば、自分が立てる問いの輪郭が見えます。対立軸が見えない文章のときは、筆者の主張が成り立たない場面はどこか、と自問すると出てきます。
第3段階:自分の立場を決める。 ここで、賛成・反対・条件付き賛成の三つから選びます。選ぶ基準は、自分が本当にそう思っているかどうかではなく、根拠を二つ用意できるかどうかです。 賛成の立場に理由が一つしか浮かばず、反対の立場に理由が二つ浮かぶなら、反対で書いたほうが答案は安定します。小論文は思想の表明ではなく、論の運び方を見る試験だからです。
第4段階:譲歩を一つ入れる。 自分と反対の立場にも一理あることを一文で認め、それでもなお自分の立場を採る理由を書きます。これが入ると論の厚みが出ます。
課題文型でもっとも多い失点は、要約と紹介で答案の大半を使ってしまうことです。課題文の内容に触れるのは、序論の一部と、自分の主張の根拠として参照するときだけと決めておくと、分量が崩れにくくなります。
資料・グラフ型:数値は「変化」と「差」を2つだけ拾う
資料・グラフ型は、数値を全部説明しようとした瞬間に破綻します。拾うのは二種類だけです。
一つ目は変化です。 時系列のグラフなら、大きく増えた期間、大きく減った期間、傾きが変わった年を探します。数字を読み上げるのではなく、いつを境に何が変わったかを一文にします。
二つ目は差です。 複数の項目や属性を比べている資料なら、最も差が大きい組み合わせを一つ選びます。これも、AはBよりも大きい、で止めずに、AとBの差はどういう条件の違いから生じていそうか、まで踏み込みます。
この二つを拾ったら、そこから問いを立てます。なぜこの年を境に変わったのか。なぜこの層だけ違う動きをしているのか。資料型は設問が「資料から読み取れることを踏まえて、あなたの考えを述べよ」という形になっていることが多く、読み取りをそのまま結論にすると中身が薄くなります。読み取りは前提で、考えは読み取りから立てた問いへの答えです。
数値を本文に書くときの注意も一つあります。資料に無い数値は書かないことです。 記憶にある統計や、だいたいの割合を足すと、そこだけ根拠のない記述になります。資料に載っている値だけを使い、それ以外は資料からは読み取れないものとして扱います。
資料が複数ある場合は、主に使う資料を一つ決め、もう一方は補助として一度だけ触れます。すべての資料に均等に触れようとすると、どれも浅くなります。
テーマ型:問いを自分で狭めてから書き始める
テーマ型は、材料が与えられない代わりに、書く範囲を自分で決める必要があります。ここを飛ばして書き始めると、一般論だけの答案になります。
手順は、問いを三段階で狭めることです。 たとえば地域社会についてあなたの考えを述べよ、という出題であれば、次のように絞ります。
- 広い問い:地域社会の何について書くか(例:担い手の減少)
- 狭い問い:どの場面の話に限定するか(例:地域の防災活動の担い手)
- 答えられる問い:その場面で何を主張するか(例:高校生が関われる形を作るべきか)
三段階目まで降りると、具体例が出せるようになります。逆に一段階目のまま書くと、地域社会は大切である、といった、誰が書いても同じ内容になります。
テーマ型でもう一つ効くのが、自分の材料の棚卸しを先にしておくことです。探究活動、部活動、委員会、アルバイト、ボランティア、身近な地域で見たこと、授業で扱った題材。試験中にゼロから思い出すのは負荷が高いので、演習の段階で使える具体例を五つか六つ、紙に書き出しておきます。試験本番では、そのストックの中から問いに合うものを選ぶだけになります。
なお、志望学部と無関係な例を無理に使う必要はありません。出題の分野が自分の志望と重なっている場合は、志望理由書に書いた関心と矛盾しない例を選ぶほうが、面接まで含めて一貫します。
ミックス型と、タイプを取り違えたときの戻し方
課題文とグラフが同時に出るミックス型では、設問文がどちらを主にしているかで手順を選びます。資料を踏まえて課題文の主張を論評せよ、という形なら課題文型の手順を骨格にし、資料は根拠として使います。課題文と資料から読み取れることを踏まえて論じよ、という形なら、資料から問いを立てる資料型の手順のほうが速く進みます。
取り違えに気づくのは、たいてい書き始めてからです。構想メモの段階で違和感があれば戻るのは簡単ですが、本文を書き始めてから気づいた場合は、次の基準で判断します。
| 気づいた時点 | 対応 |
|---|---|
| 構想メモの段階 | メモを作り直す。まだ損失は小さい |
| 序論を書き終えた段階 | 序論の最後の一文だけ書き換え、本論から軌道修正する |
| 本論の途中 | 書いた部分は残し、結論で設問に正面から答える一段落を必ず入れる |
途中で全部消して書き直すのは、残り時間が半分以上ある場合に限ります。 白紙に近い答案より、軸がややずれていても最後まで到達している答案のほうが、読み手には評価されやすいためです。
60分・90分の時間配分——分単位で決めておく
手順が決まったら、次は時間です。配分を事前に決めておく最大の利点は、途中で「今は遅れているのか」を判断できるようになることです。感覚で進めると、遅れに気づくのが結論に入ってからになります。
以下の配分は、この記事で示す設計の一例です。志望校の条件と自分の書く速さに合わせて調整してください。
60分・600〜800字の配分
| 経過時間 | 作業 | この時点で終わっていること |
|---|---|---|
| 0〜3分 | 設問の読解とタイプ判定 | 設問の動詞に線が引かれ、タイプが決まっている |
| 3〜13分 | 課題文・資料の読み取り | 主張または読み取り事実がメモに一文で書かれている |
| 13〜20分 | 構想(立場・根拠2つ・具体例・譲歩) | 骨組みのメモが完成し、書く順番が決まっている |
| 20〜52分 | 執筆 | 結論まで書き終えている |
| 52〜60分 | 見直し | 誤字・文末・字数・設問への対応を確認済み |
60分で最も崩れやすいのは構想です。20分の時点で骨組みが決まっていなければ、その時点の材料で書き始めます。 不完全な骨組みで書き始めるほうが、完璧な骨組みを作って時間切れになるより結果は安定します。
執筆に割ける32分で800字を書くには、毎分25字程度のペースが必要です。これは考えながら書く速さとしては速いほうなので、600字前後の指定であれば余裕が出ます。演習のときに自分の実測値を取っておくと、本番で無理のない字数の見当がつきます。
90分・1,000〜1,200字の配分
| 経過時間 | 作業 | この時点で終わっていること |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 設問の読解とタイプ判定 | 設問が複数なら、小問ごとの字数比まで決まっている |
| 5〜20分 | 課題文・資料の読み取り | 主張と対立軸、または変化と差の二点がメモにある |
| 20〜32分 | 構想(立場・根拠2つ・具体例・譲歩・段落割り) | 段落ごとの見出しレベルのメモができている |
| 32〜78分 | 執筆 | 結論まで書き終えている |
| 78〜90分 | 見直し | 誤字・文末・字数・設問への対応・段落間のつながりを確認済み |
90分になると、増えた30分をどこに使うかで差がつきます。増やすべきは構想と見直しで、執筆時間ではありません。 執筆を伸ばしても文章が長くなるだけですが、構想が厚くなると根拠の質が上がり、見直しが厚くなると減点が減ります。上の表では構想に12分、見直しに12分を配分しています。
90分の試験では、小問に分かれている出題も増えます。要約と意見が分かれている場合は、要約に全体の3割、意見に7割を目安に時間も字数も割り振ると、バランスが取りやすくなります。
制限時間内で作業量を配分する考え方は、他の科目でも共通です。共通テスト英語の時間配分でも同じ発想を扱っているので、時間の割り振り方の練習として参考になります。
試験時間や字数が表と違うときの換算
志望校の試験時間が表と違う場合は、比率で置き換えます。考え方は単純で、読解と構想に3分の1強、執筆に半分、見直しに1割強を割り当てます。
| 試験時間 | 読解+構想 | 執筆 | 見直し |
|---|---|---|---|
| 60分 | 20分 | 32分 | 8分 |
| 80分 | 27分 | 43分 | 10分 |
| 90分 | 32分 | 46分 | 12分 |
| 120分 | 44分 | 60分 | 16分 |
字数だけが違う場合は、執筆時間をそのままにして、書くペースを変えます。字数が多いときに構想を削ると、根拠の薄い長文になります。逆に字数が少ないときは構想を削らず、一文を短くして密度を上げます。
見直しの時間は、どの条件でも最後に削らないでください。 誤字や文末の不統一、字数不足は、内容を問わず減点されます。見直しで直せる失点は、内容で取り返すより確実だからです。
残り時間別のリカバリー
配分どおりに進まない場面は必ず来ます。残り時間ごとに、何を捨てるかを事前に決めておきます。
| 状況 | 捨てるもの | 残すもの |
|---|---|---|
| 構想が終わらないまま予定時間が過ぎた | 譲歩の段落、具体例の二つ目 | 立場と根拠一つ |
| 本論の途中で残り3分の1を切った | 本論の二つ目の根拠 | 結論の段落(必ず書く) |
| 残り10分で結論に入れていない | 現在の段落を途中で切り上げる | 以上より〜と考える、の一段落 |
| 書き終えたが見直しの時間がない | 表現の推敲 | 誤字・文末・字数の三点確認 |
いちばん避けたいのは、本論の途中で時間切れになり結論が無い答案です。結論が無いと、主張が何だったのかが読み手に伝わりません。 逆に、本論が一つの根拠だけでも、結論まで到達していれば形は整います。残り時間が読めなくなったら、結論を先に書いてしまうのも有効です。
10月からの演習の回し方と、失敗パターンの直し方
手順と配分が決まったら、あとは回数です。ここでは本番までの演習の組み方を扱います。
1週間に2本、同じ問題を2回書く
小論文は書けば書くほど伸びる、という進め方は効率が良くありません。書いた答案を検討する時間を取らないと、同じ失敗を繰り返すだけになります。 一週間の組み方の一例です。
| 曜日の役割 | 作業 | 所要 |
|---|---|---|
| 1日目 | 問題Aを本番と同じ時間で書く | 試験時間ぶん |
| 2日目 | 問題Aの自己点検と、直すべき点を3つに絞る | 30分 |
| 3日目 | 問題Aを同じ時間でもう一度書く | 試験時間ぶん |
| 4日目 | 1回目と2回目を並べて比べ、何が変わったかを書き出す | 20分 |
| 5日目 | 問題Bを本番と同じ時間で書く | 試験時間ぶん |
| 6日目 | 問題Bを先生に渡して添削を依頼 | 10分 |
| 7日目 | 休む、または材料の棚卸し(具体例のストックを増やす) | 30分 |
同じ問題を2回書くのは、手順が身についたかどうかを確かめるためです。1回目と2回目で構想にかかった時間が縮んでいれば、手順が定着しています。縮んでいなければ、判定や絞り込みのどこで止まっているかを特定します。
この回し方なら、10月中旬から11月下旬までのおよそ6週間で、12本前後の答案を書き、そのうち6本は2回ずつ検討したことになります。本数を増やすより、この形を崩さないほうが安定します。志望校の過去問をいつから始めるかの考え方は過去問を始める時期にまとめてあります。
タイマーの置き方と、途中で止めないルール
演習の効果は、本番の条件をどれだけ再現できたかで決まります。次の四つを守ります。
- タイマーは経過時間が見える形で置きます。 残り時間ではなく経過時間を表示すると、配分表と照らし合わせやすくなります。
- 途中で調べません。 分からない語や事実が出てきても、そのまま書き進めます。試験中は調べられないためです。
- 書き直したくなっても大きく消しません。 消しゴムで全体を消す時間は、本番では取れません。演習でも同じ制約を課します。
- 時間が来たら途中でも止めます。 超過して仕上げると、自分の実際の速度が分からなくなります。
未完成の答案が残ることを嫌って時間を延長しがちですが、未完成のまま止めた答案のほうが、次に直すべき点をはっきり示してくれます。どこで時間を使いすぎたのかが一目で分かるためです。
添削を頼むときに一緒に渡す4点
高校の先生に添削を依頼するときは、答案だけを渡すと、ここは分かりにくい、といった一般的な指摘で終わりがちです。次の四点を添えると、返ってくる指摘の精度が上がります。
- 問題そのもの(課題文や資料を含む一式)
- 志望校と選抜区分、試験時間と字数の条件
- 自分の構想メモ(どう組み立てたかが分かるもの)
- 特に見てほしい点を1つか2つ(例:根拠が主張を支えられているか、資料の使い方が浅くないか)
依頼するタイミングは、自己点検を済ませてからにします。誤字や文末の不統一を自分で直さずに渡すと、指摘がそこで埋まってしまい、論の中身まで届きません。返却までには数日かかるので、試験日から逆算して、最後の依頼は本番の10日前までに出しておくと安心です。
失敗パターン6類型と、直す順番
自己点検のときは、次の6類型を上から順に確認します。上にあるものほど失点が大きく、直す優先度が高い順に並べています。
| 優先 | 失敗パターン | 症状 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 1 | 設問に答えていない | 賛否を問われているのに両論併記、要約が求められているのに意見から始まる | 設問の動詞に線を引く習慣をつける。結論の一文を設問の言葉で書く |
| 2 | 結論が無い、間に合っていない | 本論の途中で終わっている | 残り時間別リカバリーの表に従い、結論を先に確保する |
| 3 | 主張と根拠がつながっていない | 根拠を読んでも主張が支えられない | 根拠の後に「したがって」を入れて読み、通らなければ根拠を差し替える |
| 4 | 課題文・資料の紹介で終わっている | 答案の半分以上が要約や数値の説明 | 紹介は序論の一部に限定し、本論は自分の論に使う |
| 5 | 具体例が抽象的 | 地域の活動などで、のような書き方で止まっている | いつ・どこで・誰が・何をしたかのうち、三つ以上を書く |
| 6 | 形式の不統一 | 文末が混ざる、話し言葉、字数不足、段落の頭を下げていない | 見直しの最後の数分で機械的に確認する |
直す点は、一回の検討につき三つまでに絞ります。指摘をすべて反映しようとすると、次の答案で意識することが多すぎて、どれも徹底できません。1と2に該当するものがあれば、それだけを直すほうが伸びは早くなります。
演習の素材が手元にない場合や、手順を通しで確認したい場合は、読み方と書き方を短い期間で一巡できる構成の本を1冊用意しておくと、演習の設計がしやすくなります。
試験2週間前と当日のチェックリスト
本番が近づいたら、確認事項を紙のリストにしておきます。当日に思い出そうとすると、抜けが出ます。
2週間前に確認する14項目
- 試験日・集合時刻・試験会場(募集要項と受験票の両方で確認)
- 小論文の試験時間
- 字数の指定(過去問で確認した値でもよい)
- 出題形式(課題文・資料・テーマ・ミックスのいずれか)
- 面接や口述試験が同じ日にあるか、その順番
- 小論文の内容が面接で問われる形式かどうか
- 筆記用具の指定(鉛筆・シャープペンシルの可否)
- 持ち込みが禁止されているもの(下敷きや計算機の使用を禁じている大学があります)
- 時計の持ち込み可否と、試験室に時計があるか
- 解答用紙の形式(原稿用紙か、マス目なしの罫線か)
- 配点(小論文が全体の何点を占めるか)
- 大学が公表している出題意図・採点の観点
- 自分の配分表(どの時間の表を使うか)
- 具体例のストック(棚卸し済みの5件から6件)
このうち上の8項目は、募集要項に書かれています。受験票が届いたら、要項の記載と食い違いがないかを必ず突き合わせてください。 集合時刻や試験室は受験票で指定されることが多いためです。
当日、書き始めるまでの手順
試験開始から最初の3分から5分で、次の順に進めます。
- 問題用紙をすべてめくり、設問が何問あるかを確認する
- 設問文の動詞に線を引く
- タイプを判定する
- 解答用紙のマス数から、実際に書ける字数を確認する
- 余白に、配分表の時刻を書き込む(読解終了・構想終了・執筆終了の3点だけ)
4番目を飛ばす人が多いのですが、指定字数と解答用紙の容量が食い違っていないかの確認は数秒で終わります。800字以内と書かれていても、解答用紙が600字分しかないことはあり得ます。
5番目の時刻の書き込みは、時計を見るたびに判断する負荷を減らすためのものです。経過時間ではなく実際の時刻で書いておくと、計算せずに遅れが分かります。
なお、準備や本番へのプレッシャーで眠れない、食欲がないといった状態が続く場合は、一人で抱えずに学校の先生やスクールカウンセラー、必要に応じて医療機関へ相談してください。
筆者の判断基準
小論文の準備で判断が分かれる場面について、筆者がどう考えているかをまとめます。
手順を固めることを、書く量より優先します。 小論文は、書けば書くほど伸びるという性質の試験ではありません。設問タイプの判定と、タイプごとの手順、時間の割り振り。この三つが決まっていないまま本数だけ重ねても、毎回ゼロから考えることになります。逆に手順が固まっていれば、本数が少なくても本番で同じ動きを再現しやすくなります。10月からの残り期間で十数本しか書けないなら、なおさら一本あたりの検討を厚くするほうが向いています。
立場は、信念ではなく根拠の数で選びます。 自分が本心で賛成している側に立つと、かえって根拠が当たり前のことに寄りがちです。試験の場では、二つ以上の根拠を具体的に書ける側を選ぶほうが、答案として成立します。これは意見を偽ることとは違います。どちらの立場にも言い分があることを前提に、書ける材料が多いほうを選ぶ、という技術的な判断です。
構想メモは、清書と同じくらい重要な成果物として扱います。 添削で根拠が弱いと言われたとき、原因が構想にあるのか執筆にあるのかは、メモが残っていないと分かりません。メモが残っていれば、構想の段階では二つの根拠を用意できていたのに書いているうちに一つが消えた、といったことも見えます。演習のたびにメモを捨てないでおくと、自分の詰まりどころが特定しやすくなります。
参考書は型の確認に使い、答案例を写す道具にはしません。 模範答案をなぞると文章としては整いますが、自分の材料で組み立てる練習にはなりません。使うなら、手順を一巡確認する段階と、書き出しで手が止まる段階に限るのが向いています。どの本が自分の目的に合うかの選び方は大学受験の小論文対策で整理しているので、この記事では個別の比較はしません。
書き出しの型から確認したい場合に、基礎段階の構成を1冊で通す選択肢もあります。
最後に、要項を読む時間を惜しまないことです。 この記事で挙げた大学の例のように、試験時間も出題形式も大学ごとに決められています。一般論としての小論文の書き方をいくら集めても、自分が受ける試験の条件は分かりません。要項を30分読むことが、演習10本ぶんの方向を決めます。
よくある質問
字数は指定の何割まで書けばよいですか
字数指定の考え方は大学ごとに異なるため、まず問題用紙の指示に従ってください。800字以内であれば上限、800字程度であれば前後の幅が認められる、という読み方が一般的です。書く量の目安としては、上限の9割を超えたあたりまで埋めておくと、字数不足を理由に減点される心配が減ります。ただし、量を満たすために同じ内容を言い換えて伸ばすと、論の密度が下がって評価は上がりません。足りないときは言い換えではなく、根拠をもう一つ増やすか、具体例を詳しくする方向で埋めてください。 逆に上限を超えそうなときは、序論と、課題文・資料の紹介部分から削ります。
時間内に終わりそうにないとき、どこを削ればよいですか
削る順番は、譲歩の段落、二つ目の具体例、二つ目の根拠、の順です。結論の段落だけは、どれだけ時間がなくても残してください。 本論が一つの根拠で終わっていても、設問に正面から答える結論があれば答案として成立します。逆に、根拠を二つ書いても結論が無ければ、何を主張したのかが伝わりません。残り時間が読めなくなった時点で、書きかけの段落を切り上げて結論に移るのが安全です。事前に、残り10分になったら結論に入る、と決めておくと、当日の判断が不要になります。
志望校の過去問が公表されていない場合はどう練習すればよいですか
実施要項では、教科・科目に係る個別テストの試験問題は原則として公表するとされ、小論文のテーマや口頭試問の内容等についても積極的に公表することが望ましいとされています。まず大学の入試情報ページで、過去のテーマや出題意図が公開されていないかを確認してください。見つからない場合は、次の三つで代替します。第一に、大学が公表しているアドミッション・ポリシーと、募集要項に書かれた出題形式の説明。第二に、同じ学部系統の他大学で公開されている問題。第三に、高校の進路指導室にある過去問ファイルです。それでも形式が分からないときは、試験時間だけを本番に合わせ、課題文型・資料型・テーマ型を順番に練習しておくと、どの形式が出ても手順を当てはめやすくなります。


コメント