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TOEICのリスニングで、音は聞こえているのに意味が取れない。速くて置いていかれる。気づいたら次の問題が始まっている——。リスニングが苦手で悩む人はとても多いです。自分は耳が悪いのかもしれない、と落ち込む必要はありません。
聞き取れない状態には、どこかに詰まっている層があります。音そのものが認識できていないのか、音は拾えているが単語を知らないのか、単語は分かるが速度に追いつけないのか。原因の層が違えば、効く練習もまったく違います。同じシャドーイングでも、効く人と時間を捨てるだけの人に分かれるのはこのためです。
この記事では、聞き取れない原因を5つの層に切り分ける手順を先に示し、そのうえで層ごとの対策・練習法の使い分け・伸びているかどうかの測り方までをまとめます。参考書そのものの選び方はTOEIC初心者の参考書は何を買う?最初にそろえる3冊の選び方で扱っているので、そちらと合わせて読んでください。リーディングのPart7が時間内に終わらない場合はTOEICリーディングの時間が足りないときの配分の決め方が担当範囲です。
- 聞き取れないのは耳のせいではなく、どこかの層で詰まっているから
- まず押さえるリスニングセクションの形式
- 聞き取れない原因は5つの層に分かれる
- 自分がどの層で詰まっているかを調べる3手順
- 層1 音声知覚|知っている単語が音では消えている
- 層2 語彙|文字では知っていても、音では知らない
- 層3 処理速度|英語の語順のまま追いつけない
- 層4 設問構造|Part別に聞くべき場所が違う
- 層5 集中と環境|45分の後半で崩れる
- 練習法の使い分け|どの層に何が効くか
- 公式のサンプル音声と公式教材の使い方
- 伸びの測り方|3つの指標で効いているかを確認する
- 層別に組む1週間の練習メニュー
- スキマ時間で回すリスニング教材
- 筆者の判断基準|最初にシャドーイングを勧めない理由
- よくある質問
- 参照した公式情報(取得日)
- まとめ:層を特定してから、その層に効く練習だけをやる
聞き取れないのは耳のせいではなく、どこかの層で詰まっているから
聞き取れない=耳が悪い、と思い込んでいる人はとても多いです。しかし日本語なら、少しざわついた店内でも、早口の相手でも、たいてい聞き取れます。それは日本語の単語も文法も知っていて、日本語の音がどうつながるかを体が知っているからです。
英語のリスニングもまったく同じ構造です。知らない音・知らない単語・処理が追いつかない速度は、耳の性能とは無関係に聞き取れません。つまり、聞き取れない原因は聴力ではなく、音の知識・語彙・処理速度・設問への構え・集中力のどこかにあります。
そして重要なのは、この5つは同時に鍛えられないということです。音が認識できていない人がいくら速度に慣れようとしても、拾える音が増えないので手応えが出ません。逆に音は拾えているのに単語を知らない人がシャドーイングを繰り返しても、意味は取れないままです。だから最初にやるべきは練習ではなく、切り分けです。
なお、TOEICのリスニングは決して不利なセクションではありません。公開テストの平均スコアを見ると、リスニングはリーディングを上回っています。
| 区分 | 平均スコア(点) |
|---|---|
| リスニング | 331.8 |
| リーディング | 266.3 |
| トータル | 598.1 |
出典はIIBCの公開テスト 平均スコア・スコア分布に掲載されている回(2023年4月23日午前・受験者14,415人)の数値です(取得日 2026-09-07)。多くの受験者にとってリスニングのほうが点の出ているセクションであり、聞き取れないのは才能の問題ではなく、対策の当て方の問題だと考えるのが妥当です。
まず押さえるリスニングセクションの形式
原因を切り分ける前に、自分が何を相手にしているのかを数字で把握しておきます。IIBC公式のテストの形式と構成によると、リスニングセクションの構成は次のとおりです(取得日 2026-09-07)。
| パート | 形式 | 問題数(問) |
|---|---|---|
| Part 1 | 写真描写問題 | 6 |
| Part 2 | 応答問題 | 25 |
| Part 3 | 会話問題 | 39 |
| Part 4 | 説明文問題 | 30 |
リスニングセクション全体は約45分・100問です。そして公式が明記している最も重要な条件が、放送は1回のみという点です。聞き返せない以上、聞き取れなかった瞬間に立ち止まると、その後の問題まで連鎖的に崩れます。
この数字を見ると、対策の優先順位が変わってくるはずです。Part3とPart4だけで69問、リスニング全体の約7割を占めます。一方でPart1は6問しかありません。写真描写の対策に時間を使うより、会話と説明文の聞き方を整えるほうが点数への影響ははるかに大きいわけです。にもかかわらず、Part1から順番に練習して前半で力尽きる人が少なくありません。
聞き取れない原因は5つの層に分かれる
聞き取れない症状を、原因の層に翻訳します。次の表で、自分に当てはまる症状を探してください。複数当てはまることもあります。
| 層 | 症状 | 詰まっている原因 |
|---|---|---|
| 層1 音声知覚 | 単語は知っているのに音として認識できない | 音のつながり・脱落・変化を知らない |
| 層2 語彙 | 音は拾えるが意味が結びつかない | 文字では知っている単語を、音では知らない |
| 層3 処理速度 | 一文ずつは分かるが全体に追いつけない | 英語の語順のまま処理できず、頭の中で訳している |
| 層4 設問構造 | 内容は分かったのに答えを選べない | 何を聞けばよいかを決めずに聞いている |
| 層5 集中と環境 | 前半はできるが後半で崩れる | 45分の持久力と、当日の音環境への慣れがない |
上位の解説記事の多くは、原因を7つ・9つと細かく列挙します。細かいこと自体は悪くありませんが、列挙されただけでは自分がどれか分からないという問題が残ります。訛りに慣れていない、文法が弱い、頭の中で和訳してしまう、といった項目は、結局のところ層1・層2・層3のどれかに吸収できます。層を5つに絞るのは、次に述べる自己診断を最後まで実行できるようにするためです。
自分がどの層で詰まっているかを調べる3手順
ここが本記事の中心です。用意するものは、スクリプト(音声の台本)と日本語訳が付いた問題1セットだけです。公式教材でも市販の問題集でもかまいません。所要時間は20分から30分ほどです。
手順1:スクリプトを見ずに解き、聞き取れなかった箇所に印をつける
まず普通に解きます。このとき、解答そのものよりどこで置いていかれたかの感覚を覚えておくのが目的です。解き終わったらすぐ答え合わせをせず、スクリプトを開いて、聞き取れなかったと感じた箇所に線を引きます。
ここで線が引けない、つまりどこが聞き取れなかったのかも分からないという場合は、層1か層3が濃厚です。音の輪郭が取れていないので、聞き取れなかった場所すら特定できない状態です。
手順2:スクリプトを読んで意味が取れるかを確かめる
次に、音声を止めてスクリプトを黙読します。制限時間は設けません。ここで意味がすんなり取れるかどうかが分岐点です。
- 読めば分かる → 層1か層3です。知識はあるのに、音から知識にたどり着けていません
- 読んでも意味が取れない単語・表現が多い → 層2です。語彙が土台から足りていません
読めば分かるのに聞き取れないという状態は、実は最も救いやすいパターンです。必要な知識はすでに頭にあり、音と知識をつなぐ回路がないだけだからです。
手順3:音声を流しながらスクリプトを目で追う
最後に、スクリプトを見ながらもう一度音声を流します。文字を目で追いながら聞くと、多くの人はたしかにそう言っていると感じるはずです。
- 目で追えば全部聞こえる → 層1(音の変化を知らない)
- 目で追っても音声のほうが先に行ってしまう → 層3(処理速度)
- 内容は完全に分かったのに、設問には答えられなかった → 層4(設問構造)
- 序盤のセットはできたのに、後半のセットで急に崩れた → 層5(集中と環境)
この3手順で、自分の詰まりが5層のどこにあるかがほぼ確定します。やみくもに毎日聞き流す前に、この30分を先に使ってください。ここを飛ばすと、以降の練習が当たりにくくなります。
層1 音声知覚|知っている単語が音では消えている
最も多いのがこの層です。英語は単語をひとつずつ区切って発音しません。語尾と語頭がつながり、弱く読まれる語は輪郭を失い、破裂音は飲み込まれます。文字で見れば難しくない単語が、音では跡形もなく消えるのはこのためです。
TOEICのリスニングでは、話者の出身地も一様ではありません。同じ単語でも、話し手によって母音の色や語尾の処理が変わります。文字情報だけで覚えてきた人ほど、この揺れに弱くなります。
この層の対策は、音を聞き分ける練習ではなく、自分で同じ音を出す練習です。自分が出せる音は聞き取れるようになりますが、出せない音はいつまでも輪郭が取れません。具体的には後述するオーバーラッピングが中心になります。
このとき、闇雲に真似をしても効率が上がりません。手順1で線を引いた箇所だけを取り出し、なぜ聞こえなかったのかを分類してください。語と語がつながっていたのか、音が落ちていたのか、弱く読まれていたのか。分類しながら10箇所ほど処理すると、同じパターンが繰り返し出てくることに気づきます。英語の音の変化は無限にあるわけではなく、パターンは限られています。
層2 語彙|文字では知っていても、音では知らない
手順2でつまずいた人はこの層です。ここで注意したいのは、語彙が足りないのではなく、覚え方が音になっていないケースが多いという点です。つづりと日本語訳のペアで暗記した単語は、目で見れば分かりますが、耳から入ってきたときに検索できません。
対策は単純で、単語を覚えるときに必ず音を通すことです。音声を聞き、声に出し、それから意味を確認する。この順番にするだけで、同じ単語帳が耳に効く教材に変わります。
TOEICのリスニングは、出てくる場面がかなり限られています。オフィス、店舗、空港や駅、社内のアナウンス、電話のやり取りといった具合です。日常英会話の語彙を広く浅く増やすより、この試験に出る場面の語彙を音つきで固めるほうが直結します。どの教材から手を付けるか迷っている場合は、参考書全体の組み立てから考えたほうが早いので、TOEIC初心者の参考書は何を買う?最初にそろえる3冊の選び方を参照してください。
層3 処理速度|英語の語順のまま追いつけない
一文ずつなら分かるのに、続けて流れると置いていかれる。これは処理速度の層です。原因はたいてい、頭の中で英語を日本語に組み替えているからです。英語は主語のあとに動詞が来て、そこから情報が後ろへ足されていきます。この順番のまま理解できないと、後ろから前へ戻る作業が発生し、その間に次の文が流れます。
対策は、返り読みをしないで意味を取る練習です。スクリプトを見ながら音声と同じ速度で読む練習が最も直接的で、これは音声知覚の練習と兼ねられます。
もうひとつ有効なのが、速度そのものを段階的に上げる方法です。再生速度を落としたところから始めて、追いつけるようになったら等速に戻します。逆に、等速で余裕が出てきたら少し速めて負荷をかけると、本番の音声がゆっくり感じられるようになります。
また、この層は英語を口から出す機会の量に素直に反応します。自分で話すときは英語の語順で組み立てざるを得ないので、聞くときの処理も同じ順番で回るようになります。まとまった量を話す機会が取りにくい場合は、担任制のオンライン英会話のように毎回同じ講師と継続できる形が、進み具合を把握しやすく続けやすい選択肢です。
担任制【ウィリーズオンライン英会話】
層4 設問構造|Part別に聞くべき場所が違う
内容は分かったのに答えを選べなかった、という人はこの層です。TOEICのリスニングは英語力だけを測る試験ではなく、限られた時間で必要な情報を拾う試験です。何を聞くかを決めずに全部を均等に聞こうとすると、取りこぼしが増えます。
IIBC公式のサンプル問題では、Part1からPart4までのDirections(形式説明)と音声つきのサンプルが無料で公開されています(取得日 2026-09-07)。Directionsは毎回同じ内容が読まれるため、本番でDirectionsを聞く必要はありません。この時間をどう使うかが、Part3・Part4の得点を左右します。
Part 1 写真描写問題
6問しかない代わりに、対策の効率が高いパートです。音声が流れる前に写真を見て、写っている人物が何をしているか、物がどこに置かれているかを、英語の単語で頭に浮かべておきます。写真に写っていない動作や、写真から判断できない状態を述べた選択肢は誤りという原則がほぼ一貫しているため、聞き取れた語が写真に無ければその時点で切れます。
Part 2 応答問題
25問と数が多く、しかも1問あたりが短いので、崩れると立て直す間もなく次が来ます。ここで決定的なのは冒頭の疑問詞です。最初の1語か2語を取り逃すと、残りをすべて聞き取っても正解を選べません。逆に、疑問詞さえ取れれば、応答として成立しない選択肢を機械的に落とせます。
注意したいのは、素直な答えが正解とは限らない点です。時刻を尋ねられて時計が壊れていると答えるような、間接的な応答が正解になる設計が含まれます。質問と選択肢が意味としてかみ合うかで判断し、単語の一致で選ばないのが原則です。
Part 3・Part 4 会話問題と説明文問題
合わせて69問。ここが最大の得点源です。この2つのパートで効くのは先読み一択と言ってよく、音声が流れる前に設問と選択肢に目を通しておくかどうかで正答率が変わります。
とはいえ、最初から3問すべてを先読みしようとすると間に合いません。段階を踏みます。
- まず設問文だけを読む(選択肢は読まない)
- 慣れたら設問文のキーワードだけを拾う読み方に変える
- さらに余裕が出たら選択肢にも目を通す
先読みが間に合わない状態で無理に読もうとすると、音声の冒頭を聞き逃して逆効果になります。間に合わないうちは、設問1問分だけ読んで残りは音声に集中するほうが得点は安定します。
層5 集中と環境|45分の後半で崩れる
前半はできたのに後半で崩れる人は、英語力ではなく持久力の問題です。約45分間、途中で止まらない音声を追い続けるのは、慣れていないと想像以上に消耗します。
さらに、本番の音環境も練習と違います。会場によっては音がこもり、周囲の物音も入ります。イヤホンで整った音質に慣れきっていると、当日の聞こえ方に驚いて最初の数問を落としかねません。
対策は2つです。ひとつは、通しで45分を走る練習を月に数回は入れること。細切れの練習だけでは持久力は付きません。もうひとつは、スピーカーで、少し離れた位置から流して解く練習を混ぜることです。多少条件の悪い音で解いておけば、当日の環境が想定内に収まります。
そしてもうひとつ現実的な対策が、聞き逃した1問を引きずらないと決めておくことです。放送は1回きりなので、戻る手段はありません。分からなかった問題は即座にマークして次に構えるというルールを、練習の段階で体に入れておきます。
練習法の使い分け|どの層に何が効くか
シャドーイング、ディクテーション、オーバーラッピング、先読み訓練。名前は知っていても、どれをいつやるかを決めている人は多くありません。層と練習法の対応は次のとおりです。
| 練習法 | 主に効く層 | 効きにくい層 |
|---|---|---|
| ディクテーション | 層1 音声知覚 | 層3・層4(時間対効果が低い) |
| オーバーラッピング | 層1 音声知覚・層3 処理速度 | 層2(語彙が無いと意味が入らない) |
| シャドーイング | 層3 処理速度 | 層1・層2(土台が無いと形だけになる) |
| 音つきの語彙練習 | 層2 語彙 | 層4 設問構造 |
| 先読み訓練・時間を計った演習 | 層4 設問構造・層5 集中 | 層1・層2 |
ディクテーション(書き取り)
音声を止めながら、聞こえたとおりに書き取ります。聞き取れていない箇所が物理的に空白として残るのが最大の利点で、自己診断の方法としては最も直接的です。一方で時間がかかるので、毎日長時間やる練習ではありません。層1の人が、週に1回から2回、短い音声で行うのが現実的です。
オーバーラッピング(重ね読み)
スクリプトを見ながら、音声にぴったり重ねて声を出します。文字があるので語彙の負荷がかからず、音の変化と速度だけに集中できるのが特徴です。層1と層3の両方に効くため、多くの人にとって費用対効果の高い練習です。
シャドーイング(追いかけ読み)
スクリプトを見ずに、少し遅れて音声を追いかけて声を出します。負荷が高く効果も大きい練習ですが、土台ができていない段階でやると口だけが動いて中身が入りません。オーバーラッピングで無理なく重ねられるようになってから移行するのが順番です。
先読み訓練
Part3・Part4を、時間を計りながら通しで解きます。目的は英語力ではなく、設問を読む速度と、音声が始まる前に構えを作る動作の自動化です。層4と層5はこの練習でしか鍛えられません。
公式のサンプル音声と公式教材の使い方
練習の素材は、まず公式から確保するのが確実です。前述のサンプル問題ではPart1からPart4までのDirectionsと音声つきサンプルが公開されており、費用をかけずに本番と同じ形式・同じ話者の音声に触れられます。自己診断の3手順を試すだけならここで足ります。
まとまった量を確保する段階になったら公式教材です。IIBC公式の教材ページによると、公式のリスニング用トレーニング教材はETSがすべての問題を制作しており、372問を1セット約20問×20セットの形で収録、公式スピーカーによる音声が付きます(取得日 2026-09-07)。1セットにPart1からPart4までが含まれる構成なので、短時間で全パートを一巡できるのが実務的な利点です。
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同じシリーズには続編もあり、1冊を回し終えて音声を覚えてしまった場合の2冊目として使えます。
ただし公式教材は、解答の根拠を丁寧に解説するタイプではありません。問題・解答・訳・スクリプトという構成なので、なぜその選択肢が誤りなのかを一問ずつ言葉で説明してほしい段階の人には向きません。その場合は解説量の多い市販の対策本を先に1冊挟むほうが進みます。公式教材の価値は、本番と同じ話者・同じ形式の音源をまとまった量で確保できる点にあります。
なお、教材そのものの選び方を体系的に比較したい場合は英語リスニング教材はどれを選ぶ?目的別の選び方と進め方にまとめています。
伸びの測り方|3つの指標で効いているかを確認する
リスニングの練習は、模試のスコアだけを見ていると手応えが分かりません。スコアは体調や問題との相性で上下するうえ、次の受験まで結果が出ないからです。練習が効いているかどうかは、次の3指標で毎週確認できます。
指標1:聞き取れなかった語の件数。手順1と同じやり方で、スクリプトに線を引いた箇所を数えます。同じ難度の音声で、この件数が減っていれば層1が改善しています。
指標2:ディクテーションの空白率。短い音声を書き取り、書けなかった語の割合を出します。数値化できるので、週ごとの比較がしやすい指標です。
指標3:失点の位置。Part別に間違えた問題を記録します。層4が改善すると、間違いがPart3・Part4の後半から前半へ移動する、あるいは特定の設問タイプに偏るという形で変化が見えます。全体の正答数が同じでも、失点の分布が動いていれば前に進んでいます。
逆に、3か月続けても3指標のどれも動かない場合は、練習が層に当たっていない可能性が高いので、自己診断からやり直してください。続ければいつか伸びるという前提で同じ練習を回し続けるのが、最も時間を失うパターンです。
層別に組む1週間の練習メニュー
平日に長時間は取れない前提で、層ごとの標準形を示します。
層1が主因の場合。平日は毎日15分のオーバーラッピング。土日のどちらかで、短い音声のディクテーションを30分。素材は1週間同じもので構いません。むしろ同じ素材を繰り返すほうが、音の変化のパターンが定着します。
層2が主因の場合。平日は音つきの語彙練習を毎日15分から20分。週末に、覚えた語が実際の音声で聞き取れるかを問題で確認します。語彙は増えるまで手応えが出にくいので、指標2で確認しながら進めます。
層3が主因の場合。平日はオーバーラッピング10分とシャドーイング10分。土日のどちらかで、速度を上げた音声での演習を入れます。話す機会を作れるなら、週1回でも継続する価値があります。
層4・層5が主因の場合。平日は先読みだけを取り出した短時間の演習。週末に45分通しの演習を1回。この層は練習量ではなく、通しでやる回数が効きます。
いずれの場合も、通勤や通学の時間は層1と層2の練習に向いています。移動中の使い方はTOEICリスニングを通勤時間で鍛える教材と進め方を参照してください。
スキマ時間で回すリスニング教材
まとまった時間が取れない日でも、短い区切りで進められる教材があると練習が途切れません。1回分が数分で終わる構成のものは、通勤中や休憩時間に1セットだけ回すという使い方ができます。
ただし、短時間教材だけでリスニングを完成させることはできません。層4と層5は通しの演習でしか鍛えられないため、週末にまとまった時間を1回確保する前提で、平日の穴埋めとして使う位置づけが現実的です。
筆者の判断基準|最初にシャドーイングを勧めない理由
リスニングの記事の多くはシャドーイングを最初に勧めます。本記事がそうしていないのには、はっきりした理由があります。
第一に、シャドーイングは前提条件が多い練習だからです。スクリプトを見ずに音声を追いかけるには、音の輪郭が取れていて(層1)、単語の意味が瞬時に出て(層2)、語順のまま処理できる(層3)必要があります。これらが揃っていない段階でやると、音の形だけを真似る作業になり、意味処理が置き去りになります。手応えが出ないので続かず、リスニングそのものが嫌になるという結果になりがちです。
第二に、オーバーラッピングのほうが同じ時間で得られるものが多いからです。文字があるぶん語彙の負荷が消え、音の変化と速度の2点に集中できます。層1と層3に同時に効き、しかも失敗しにくい。最初の1か月をここに使ったほうが、結果的にシャドーイングへ早く進めます。
第三に、測れる練習を先に置きたいからです。ディクテーションとオーバーラッピングは、書けなかった語や重ねられなかった箇所という形で不足が可視化されます。シャドーイングは、うまくできたかどうかの判定が主観に寄りがちです。伸びが測れない練習を初期に置くと、効いているのかどうか分からないまま時間が過ぎます。
したがって本記事では、自己診断からオーバーラッピング中心へ、必要に応じてディクテーションで検証し、土台ができてからシャドーイングへ、という順番を基準にしています。すでに読めば分かる状態で速度だけが問題という人は、この限りではありません。
よくある質問
Q. 毎日どれくらいやればいいですか
時間の長さより、毎日英語の音に触れる日数のほうが効きます。平日15分でも、7日中6日続けるほうが、週末に2時間まとめてやるより層1と層2には効果的です。ただし層4と層5は例外で、こちらは45分通しの演習を週1回入れないと鍛えられません。短時間の継続と、週1回の通し演習を組み合わせてください。
Q. スクリプトは見るべきですか
段階によります。最初は見ずに解き、答え合わせの前に見るのが基本です。スクリプトを見る目的は答えの確認ではなく、聞き取れなかった箇所がなぜ聞き取れなかったのかを分類することにあります。音の変化なのか、知らない単語なのか、速度なのか。この分類が層の特定に直結します。逆にオーバーラッピングの練習中は、最初から最後までスクリプトを見たままで構いません。
Q. 先読みが間に合いません
最初は間に合わなくて当然です。設問文をすべて読もうとせず、キーワードだけを拾う読み方に切り替えてください。誰について聞かれているのか、何をするのか、いつなのか。この3点のどれが問われているかが分かれば、聞くべき場所は絞れます。それでも間に合わないうちは、3問のうち1問分だけ先読みして残りは音声に集中するほうが、結果として得点は安定します。
Q. 聞き流しだけで伸びますか
層2と層3の土台がある人が、耳を英語のリズムに慣らす目的で使うなら意味はあります。しかし層1で詰まっている人が聞き流しても、聞き取れない音は聞き取れないままです。音の変化を知らない状態で長時間聞いても、認識できない音は認識できません。自己診断で層1と判定されたなら、聞き流しではなく声を出す練習に時間を振り替えてください。
参照した公式情報(取得日)
| 内容 | 出典 | 取得日 |
|---|---|---|
| リスニングセクションの構成(約45分・100問、Part別の問題数、放送は1回のみ) | IIBC テストの形式と構成 | 2026-09-07 |
| Part1からPart4のDirectionsと音声つきサンプル問題 | IIBC サンプル問題 | 2026-09-07 |
| 公式リスニング教材の構成(ETS制作・372問・1セット約20問×20セット・公式スピーカー音声) | IIBC 公式教材・問題集 | 2026-09-07 |
| 公開テストの平均スコア(掲載回 2023年4月23日午前) | IIBC 公開テスト 平均スコア・スコア分布 | 2026-09-07 |
まとめ:層を特定してから、その層に効く練習だけをやる
TOEICのリスニングが聞き取れないのは、耳の性能ではなく、音声知覚・語彙・処理速度・設問構造・集中と環境のどこかが詰まっているからです。
やることの順番は変わりません。スクリプト付きの1セットで3手順の自己診断を行い、詰まっている層を特定する。その層に効く練習だけを平日15分ずつ回す。週に1回、指標を数えて効いているかを確認する。この3つを回せば、練習が空振りする期間を最小限にできます。
そして、月に数回は45分の通し演習を入れてください。層1から層3が改善しても、通しで走る力と当日の音環境への慣れがなければ、本番では点になりません。原因を切り分けてから練習する。これがリスニングで遠回りしにくい進め方だと考えています。


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